eスポーツが「スポーツ」と呼べるかどうかには議論があります。それに対して、12月3日にFacebookに投稿された『NHKクローズアップ現代+』のダイジェスト動画では、2022年杭州アジア大会の正式競技採用が予定されている「eスポーツ」を特集しています。
eスポーツとはなんだ
eスポーツの「e」とは、エレクトロニックのことです。
つまり、エレクトロニック・スポーツの略称です。
eスポーツは、対戦型コンピュータゲーム(ビデオゲーム)操作をスポーツ競技として捉える際の名称です。
エレクトロニック・スポーツの略称であり、eSports、e-Sports、電子競技などとも表記されます。
今年は、コロナ禍でオリンピックが延期され話題としても後景に退けられた状態ですが、オリンピック開催に向けて盛り上がり始めた2018年には、「2018年ユーキャン新語・流行語大賞」のトップ10に、eスポーツという言葉が入ったほどです。
ただし、話題の中身は賛否両論です。
つまり、「スポーツ」という言い方に対して、我が国では反対論者が多いのです。
- スポーツとは全身の筋肉を動かして汗まみれになるもの
- ゲームなんて遊びだから真剣勝負ではない
- 国際的にきちんとしたマーケットなのか
といった反対理由が根強い。
私はいずれにしても、突き詰めていったら合理性を欠く権威主義だと思います。
広辞苑によれば、スポーツというのは、「陸上競技・野球・テニス・水泳・ボートレースなどから登山・狩猟などにいたるまで、遊戯・競争・肉体的鍛錬の要素を含む身体運動の総称」だそうです。
これ以外の区別は、主観(要するにその人個人の勝手な思い入れ)でしかありません。
まず、eスポーツが、「遊戯・競争」であることは、客観的に異論がありませんよね。
それだけではありません。
「肉体的鍛錬の要素を含む身体運動」でもあります。
ボタンを押すことと視線を動かすことが「身体運動」なのか、という向きもあるかも知れませんね。
少なくとも、そうである人々はいます。
前置きが長くなりましたが、Facebookに投稿された『NHKクローズアップ現代+』のダイジェスト動画をシェアします。
障碍のある人が、eスポーツ自体が「身体的運動」であり、かつeスポーツに生きがいを感じているという話です。
”指先”で戦う 障害者とeスポーツ https://t.co/uo27VPE7Qk @FacebookWatchより
— 石川良直 (@I_yoshinao) December 12, 2020
動画では、徐々に筋力が低下する難病を患う吉成健太郎さんを紹介。
入院している病院では、一番のeスポーツプレイヤーだそうです。
プレイヤーたちが病院お手製のコントローラーを使い、わずかに動かせる指先だけで戦っている様子が映されます。
手足が動かせないプレイヤーは、口の動きで操作できるジョイスティックや、わずかな力で押すことのできるボタンも用意されています。
子供の頃からゲーム好きだった吉成健太郎さんは、意欲的にeスポーツに取り組み、腕を上げてきたそうです。
「僕の障害は出来ないことが増えていく一方なんですが、ゲームの中では新しく能力を得たりとか、努力が結果に結びつく道筋が見えていて、次も頑張ろうって、嬉しいなって思えます」(動画で吉成健太郎さん)
障碍や難病と、怪我や一般の病気を混同する人は、入院していればいずれ治るんじゃないか、リハビリをすればある程度機能回復するのではないかと考えがちですが、本来リハビリは原状復帰を目的とするものでありませんし、機能が進行形で失われていく場合もあるのです。
その吉成健太郎さんたちの入院しているプレーヤーズが、全国大会で準優勝した高校生チームと対戦。
高校生チームは健常者です。
しかし、eスポーツは画面上の戦いが全てなので、プレイヤーに障害があるかどうかは関係ありません。
つまり、そのゲームをできるならハンデになりません。
スティックでキーボードを叩くプレイヤーが、ブラインドタッチ当たり前の猛者たちに勝つこともあります。
障碍者・難病者にとってのeスポーツ
障碍者・難病者にとってのeスポーツとは
- 限られた機能を駆使する「身体的運動」である
- 入院中の障碍がある人でも努力が結果に結びつく
- ゲームの中では健常者に対するハンデがない(つまり対等である)
- 寝たきりで人との交流も少ない人にとっては刺激にもなる
というインクルーシブな新機軸があります。
eスポーツの競技者・観戦者人口は、すでに野球の規模は上回っていると指摘する向きもあります。
プロプレーヤーでは、20億の賞金をとる人もいるといいますから、決して経済的にも侮れない市場です。
現在の注目は、2024年のパリオリンピックで正式競技になるかどうかといわれています。
もちろん、ゲーム(競技)には流行があって競う根拠に普遍性がないとか、IOCがまだeスポーツの連盟を承認していないとか、競技としての姿かたちが未完成であることは確かです。
マインドスポーツは五輪競技にふさわしくない、という意見はありますから。
先程は、eスポーツがスポーツの定義に入らないという意見に反対することを書きましたが、私個人は、「スポーツ」と呼ぶかどうかの議論自体はそもそも本質ではないと思っています。
そして、たとえば、テニス>eスポーツとか、別のすでに出来上がっている競技と比べて一面的な比較をするようなことは、傲岸不遜でかつ不毛な議論だと思います。
eスポーツを生きがいとしている人々が増えてきている。
その広がりを温かく見守るということでいいのではないでしょうか。
以上、eスポーツが「スポーツ」と呼べるかどうかには議論があるが、難病や障碍のある人にとってスポーツである理由はこれだけある!、でした。
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