『ぼくはアスペルガーなお医者さん「発達障害」を改善した3つの方法』は、当事者として医師が自身の体験と意見を述べた書籍です。アスペルガー症候群の人とその周囲の人々に対して、“アスペ先生”の体験談&アドバイスを綴っています。
について
『ぼくはアスペルガーなお医者さん「発達障害」を改善した3つの方法』は、医師の畠山昌樹さんが、KADOKAWAから上梓した書籍です。
整形外科医ですが、ご自身がアスペルガー症候群でもあります。
そこで本書は、アスペルガー症候群の人とその周囲の人々に対して、“アスペ先生”の体験談&アドバイスを綴っています。
アスペルガー症候群とはなんだ
では、そもそもアスペルガー症候群とはなんでしょうか。
アスペルガー症候群というのは、広汎性発達障害の一種で、知能や言語能力など知的な障害のない高機能自閉症のことです。
アスペルガー症候群の特徴として代表的なのは、他人とのコミュニケーションを上手く取れないことです。
まず、アスペルガー症候群の人は、抽象的なことを理解するのが苦手です。
そのため、相手が表情から今どのような気持ちなのかを把握することができないので、知らず知らずのうちに相手を不快にさせてしまったり、傷つけてしまったりするケースが多いのです。
対人関係の齟齬、こだわり、「行間」を読めない言葉の使い方の「誤り」などが見られることで、周囲からは、自己中心的な人、空気が読めない人と思われてしまうことがあります。
でも、それは決して「自分が偉い」など傲慢な気持ちからではなく、脳の障害によるものなのです。
具体的には、以下のようなこともアスペルガーの特徴として挙げられます。
- 会話が成立しにくい
- ジェスチャーでのコミュニケーションができない
- ごっこ遊びが苦手
- 間接的表現は理解できない
- 柔軟な行動ができない
- 整理整頓が下手
- 特定のことに強い関心を示す
- 決められたルーチンワークをきちんとこなす
アスペルガーの人は他人と話をしても、話がずれてしまって会話が成立しにくいのです。
間接的表現を理解できないことが多いですし、その時その時に応じた柔軟な行動ができません。
言葉は、辞書に書かれているとおりに認識するので、言葉の裏の「ホンネ」が読めないのです。
日本のような、ダブスタや“阿吽の呼吸”に満ちた文化は、さぞ生きづらいことでしょう。
前頭葉のはたらきに障害があるため、他人の身になって考えることも苦手です。
いつも同じ行動パターンで生活していることが多く、急に予定を変更したり、今行っている作業を変更したりすることで、脳内が混乱して動揺することがあります。
ただし、その「生真面目さ」から、決まった課題を与えられたり、ルールがはっきりしている環境だったりと、パターン化した活動において高い成果を上げることがあります。
アスペルガー症候群=天才という誤解
数々の大ヒット映画を生み出し続けているスティーブン・スピルバーグ監督は、アスペルガー症候群の診断を受けたこと、学習障害であるディスレクシアだったことを明かしています。
理論物理学者のアルベルト・アインシュタイン、イタリアの芸術家レオナルド・ダ・ヴィンチ、日本人であれば知らない人はいない織田信長もアスペルガー症候群だったと考えられているそうです。
もっとも、だからといって、一部に誤解されているような、アスペルガー症候群=天才、などと単純には捉えないでください。
「高機能」の自閉症と書きましたが、これは「知的障害がない」という意味であり、IQでは支援学級が妥当な70台の人も含まれていて、そのふるまいは様々なのです。
また、かりに「勉強ができる」としても、コンスタントに優秀というわけではなく、科目によって得手不得手がはっきりした「まだらな秀才」であることが少なくありません。
ですから、アスペルガー症候群=天才、だからそうでない人は怠けているだけ、などという短絡的な偏見は改めなければなりません。
アスペルガー症候群の頻度は10000人に91人(イギリス自閉症協会の報告)といわれ、自閉症の遺伝子は見つかっていないそうです。
治療法
アスペルガー症候群は、「病気」ではなく脳の「障碍」であり、治療法は見つかっていません。
ただし、心理療法などによって生活を送りやすくすることはできます。
心理療法とは、どうすれば他人と上手く接することができるのか、もしくはどうしたら生活しやすくなるのかなどを本人と一緒に考えていくというものです。
この療法を受けることによって、以前よりも生きやすいと感じるようになるでしょう。
また、アスペルガーになると過度なストレスを受けてしまうことがあるので、うつ病になってしまう人もいます。
この場合、抗うつ剤などで症状を抑えるというのが一般的な治療法です。
このように、アスペルガーは治したくても治せるものではないので、周囲の人のサポートが大切とされています。
ブレーキ脳が機能しない
さて、畠山昌樹さんは、本書『ぼくはアスペルガーなお医者さん「発達障害」を改善した3つの方法』において、著者の自身がアスペルガー症候群として、子供時代、大学時代、合コンや恋愛、結婚生活(離婚)などにおいてどう生活し、どのような失敗をし、どう克服したかを告白。
その上で、アドバイスを述べています。
たとえば、健常(定型発達)の人とアスペルガー症候群の人は、このような違いがあるといいます。
普通の人の脳での意思決定
暑いなあ! → 大脳辺縁系(アクセル脳) → 服を脱ごうかな → 前頭葉(ブレーキ脳) → みんなの前で裸になったら恥ずかしいなあ → 我慢しよう → 問題なし
ところがぼくたちは、先天的に(または生後ごく初期の段階のときに)、何らかの理由によって、ブレーキ脳の前頭葉がうまく働かなくなっているのです。だから、ひとたび「暑い」と感じ、大脳辺縁系がアクセルを踏んだら、場所をわきまえずに授業中でも服を脱いでしまったり、「暑い!」と叫んでしまったりするのです。
アスペルガー的な脳での意思決定
暑いなあ! → 大脳辺縁系(アクセ 脳) → そうだ、服を脱ごう! → 問題発生
「ブレーキ脳」がはたらかない、ということです。
畠山昌樹さんは、「目標やミッションを掲げて、それに向かってがんばることが大好き」といいます。
相手の心を理解しなければならない恋愛は苦手で、自身の離婚もそれが原因だったと振り返っています。
こうした失敗談は、たぶんアスペルガー症候群の人が読まれれば、思い当たるところがあるかもしれません。
改善のために3つの実践
畠山昌樹さんは具体的には次の実践を行ったそうです。
- 食生活改善によるダイエット
- アスペルガー症候群に詳しい主治医を見つけること
- 眼振により、怒りや発作の鎮静を行うこと
眼振というのは、「イライラしたときに、自分の指を左右に動かしながら、それを目で追い、その状態でイライラしていることについて考えるというやり方で、これによって脳のぐるぐるやイライラも消せるようになりました」と述べています。
誰でもできる実践ですね。
そうやって、典型的なアスペルガー症候群の畠山昌樹さんは、たくさの失敗と経験を重ねる中で、普通の人が行う「共感」「心を読む」「辞書の意味以外の意味を考える」ことができるようになったそうです。
最初から諦めないで、改善につながることは積極的に、前向きに行うことが大切です。
アスペルガー症候群の人とのコミュニケーション
一方、アスペルガー症候群ではない人が、アスペルガー症候群の人にどう接したらいいかについてもアドバイスしています。
アスペルガー症候群の人と接する際のポイントを私なりにまとめると、以下の通りです。
- 曖昧な表現を控える
- 穏やかな環境を提供する
- 長所に積極的な評価を行う
- こだわりを応援する
- 一度に多くのことを求めない
- できそうにないことをやらせない
「1」の場合、畠山昌樹さんは、抽象的な言い回しや曖昧な「空気を読め」ではなく、論理的な説明が解決につながると提案しています。
そして、わかりやすく具体的であること。
アスペルガーの人に抽象的な言い回しをしても理解することが難しいので、具体的な表現をするようにしましょう。
例えば、普通であれば、「10時くらいに待ち合わせ」と言ってしまうことがありますが、アスペルガー症候群の人は、「10時くらいっていったいいつだろう」と思ってしまうのです。
こういったことを防ぐためにも、10時なら「10時ちょうどに待ち合わせ」という言い方にするのです。
芸能界などで使われる、「アバウト10時」なんていうのは絶対論外です(笑)
以上、『ぼくはアスペルガーなお医者さん「発達障害」を改善した3つの方法』は、当事者として医師が自身の体験と意見を述べた書籍、でした。
ぼくはアスペルガーなお医者さん 「発達障害」を改善した3つの方法 – 畠山 昌樹
ぼくはアスペルガーなお医者さん 「発達障害」を改善した3つの方法【電子書籍】[ 畠山 昌樹 ] – 楽天Kobo電子書籍ストア
コメント